
※この記事は、架空のFX教材を題材にしたフィクションです。
実在の商品・販売者・サービスとは関係ありません。
勝率100%。
最初に見た時、
私はその数字を二度見しました。
99%ではありません。
100%。
10年間のバックテスト。
取引3,842回。
勝ち3,842回。
負け0回。
そんなFX教材でした。
価格は29,800円。
安くはない。
でも、
勝率100%なら安い。
……本当なら。
私は買いました。
勝率100%をうたうFX教材を買った
教材名は、
「PERFECT ENTRY」
もちろん、
この記事のために作った架空の名前です。
購入した時、
私はレビューを書くつもりで、
簡単なメモを残していました。
【資料A】購入時のメモ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 教材名 | PERFECT ENTRY |
| 価格 | 29,800円 |
| 184ページ | |
| 動画 | 12本 |
| 検証期間 | 10年間 |
| 取引回数 | 3,842回 |
| 勝率 | 100% |
| 販売者 | K.S |
販売ページで、
特に強調されていたのはこの部分です。
裁量を排除した完全ルール。
条件が揃ったらエントリー。
誰が検証しても、
同じ場所で同じ結果になります。
過去10年間の勝率は100%です。
勝率100%。
そこも気になります。
ただ、
私はもう一つの言葉の方が気になりました。
「誰が検証しても、同じ場所で同じ結果になる」
FX教材なら、
ここは重要です。
販売者だけが使える。
後からチャートを見れば説明できる。
でも、
リアルタイムでは判断できない。
それでは再現性がありません。
だから、
自分でも検証してみようと思いました。
その前に、
販売ページをもう一度開きました。
FX教材の販売ページは、もう存在しなかった
購入メールに残っていたURLをクリックしました。
画面には、
「404 Not Found」
販売ページは、
もう存在しませんでした。
「……早くない?」
商品名を検索します。
PERFECT ENTRY。
出ない。
販売者名。
K.S。
出ない。
「PERFECT ENTRY FX教材」
出ない。
SNSも探しました。
見つかりません。
販売終了した教材なら、
それ自体は珍しくありません。
販売サイト自体が閉じられ、
ページが見られなくなることもあります。
ただ、
購入してからあまり時間が経っていませんでした。
少し気になりました。
幸い、
レビュー用に販売ページの一部を保存していました。
【資料B】販売ページに掲載されていた説明
・過去10年間を検証
・取引回数3,842回
・勝率100%
・裁量なし
・誰が使っても同じ結果
・条件はすべて教材内で公開
販売ページは消えました。
でも、
教材は手元に残っています。
PDF。
動画。
バックテストの取引履歴。
それと、
教材とは別に入っていた検証用の生データ。
レビューを書く材料としては、
十分でした。
私は、
そのまま検証を始めました。
FX教材のルールを過去チャートで検証してみた
ルール自体は、
意外なくらい単純でした。
買い条件
① 20期間移動平均線より価格が上
② 直近高値を上抜ける
③ 陽線で確定
④ 次の足の始値で買い
売りは逆。
難しくありません。
まず、
教材に掲載されたチャートを確認しました。
47ページ。
条件一致。
勝ち。
53ページ。
条件一致。
勝ち。
61ページ。
勝ち。
74ページ。
勝ち。
「本当に全部勝ってるな」
少し期待しました。
少なくとも、
教材に掲載されたチャートだけなら綺麗です。
綺麗すぎるくらいに。
そこで今度は、
教材に載っていない期間を確認しました。
同じ条件を探します。
ありました。
買い条件成立。
次の足で買い。
その後、
下落。
負け。
「……あるじゃん」
別に、
負けること自体は問題ではありません。
普通の手法なら負けます。
問題は、
教材に、
「過去10年間、同条件で負けなし」
と書かれていたことです。
FX教材の勝率100%に、最初の違和感が出てきた
最初は、
私の見落としだと思いました。
PDFを読み直します。
すると92ページに、
一文ありました。
※直近高値まで20pips未満の場合は、エントリーを見送ります。
「ああ、これか」
先ほどの負けトレードを確認します。
直近高値まで18pips。
除外。
なるほど。
私の見落としでした。
検証を続けます。
次の負け候補。
直近高値まで31pips。
今度は問題ありません。
条件成立。
でも、
負け。
またPDFを調べます。
118ページ。
※15分足RSIが38以下の場合、買いエントリーは行いません。
負けた場面のRSI。
37.6。
除外。
「なるほど」
また、
私の見落としです。
……
たぶん。
検証を続けると、
同じことが何度か起きました。
負ける場所を見つける。
教材を探す。
どこかに除外条件が書いてある。
曜日。
時間帯。
ボラティリティ。
移動平均線の傾き。
ローソク足の形。
条件は、
思っていたより多い。
それ自体は、
おかしなことではありません。
複数条件を使うFX手法は普通にあります。
ただ、
いつの間にか私は、
「このルールで判断できるか」
ではなく、
「この負けを除外する条件は、どこに書いてあるか」
を探していました。
【メモ】
ここまでは、単純に「条件が多すぎるFX教材」だと思っていた。
FX教材の取引履歴に、185番だけ存在しなかった
次に、
教材に掲載されたバックテストの取引履歴を確認しました。
3,842回。
全部を見るのは大変なので、
一部だけ抜き出しました。
【資料C】バックテストの取引履歴の一部
| 取引番号 | 方向 | 結果 |
|---|---|---|
| … | … | … |
| 183 | BUY | +18pips |
| 184 | SELL | +24pips |
| 186 | BUY | +11pips |
| 187 | SELL | +31pips |
| … | … | … |
最初は、
普通に読み飛ばしました。
183。
184。
186。
187。
……
185がない。
「負けを消した?」
真っ先にそう思いました。
もし185番が負けなら、
話は簡単です。
負けを抜いた。
だから勝率100%。
分かりやすい。
怪しい。
レビューも書きやすい。
でも、
念のため確認しました。
教材とは別に入っていた、
取引履歴を一覧で確認できる生データです。
【資料D】生データに残っていた取引番号185
教材とは別に入っていた、取引履歴を一覧で確認できる生データファイルより抜粋。
| 取引番号 | 方向 | 結果 |
|---|---|---|
| 185 | BUY | +43pips |
……
勝っています。
しかも、
+43pips。
周囲の取引より大きい。
「なんで勝った取引を消す?」
ここで、
最初の推理が崩れました。
勝っている185番は、なぜFX教材から消えたのか
185番のチャートを確認しました。
綺麗な勝ちです。
エントリー後、
ほぼ一直線に上昇。
普通なら、
販売ページに載せてもよさそうです。
ところが、
教材に書かれたルールと照らし合わせると、
妙なことが分かりました。
20期間移動平均線の条件。
合わない。
直近高値。
抜けていない。
RSI。
条件外。
時間帯。
これも除外。
つまり、
教材に書かれているルールでは、
185番でエントリーできません。
でも、
元の検証データにはある。
そして、
勝っている。
私は、
購入時に保存した販売ページをもう一度見ました。
条件はすべて教材内で公開。
すべて。
では、
185番は何の条件で買ったのか。
分かりません。
販売者に聞くこともできません。
販売ページは、
もう消えています。
FX教材の実績に載っていない取引が、ほかにも見つかった
185番だけなら、
何か別の理由があったのかもしれません。
入力ミス。
古いルール。
単なる記載漏れ。
なので、
生データをもう少し確認しました。
すると、
ほかにもありました。
【資料E】教材のルールと一致しない取引
元の検証データと、教材に記載された売買ルールを照合。
| 取引番号 | 方向 | 結果 | 教材ルール |
|---|---|---|---|
| 185 | BUY | +43pips | 不一致 |
| 421 | SELL | -17pips | 不一致 |
| 786 | BUY | +28pips | 不一致 |
| 1,204 | SELL | -11pips | 不一致 |
勝ち。
負け。
両方あります。
共通しているのは、
結果ではありません。
教材に書かれたルールでは、
説明できない取引だったこと。
185番だけではありませんでした。
ここで私は、
教材の最初のメモをもう一度見ました。
取引回数。
3,842回。
少し前まで、
何とも思わなかった数字です。
でも今は、
別のことが気になります。
3,842回というのは、
何を数えた数字なんだろう。
勝率100%のFX教材に、最後まで残った疑問
最初、
私は勝率100%を疑いました。
負けた取引を消しているのではないか。
そう思いました。
でも、
185番は勝っていました。
そして、
教材にはない取引は185番だけではありませんでした。
勝っているものもある。
負けているものもある。
教材に書かれたルールと一致しない。
それ以上のことは、
分かりません。
ルールを作ってから検証したのか。
過去の取引を見てから、
ルールを作ったのか。
途中でルールが変わったのか。
教材に載せる取引だけを、
後から選んだのか。
販売者本人にしか、
分からないのかもしれません。
ただ、
購入時に保存した販売ページには、
もう一つ文章が残っています。
誰が検証しても、
同じ場所で同じ結果になります。
最初に読んだ時は、
頼もしい言葉に見えました。
今は、
少し違って見えます。
同じ場所で、
同じ結果になったのか。
それとも、
同じ結果になった場所だけが、
ここに残っているのか。
確認する方法は、
もうありません。
販売ページは、
消えています。
手元に残っているのは、
184ページのPDF。
販売ページのスクリーンショット。
バックテストの取引履歴。
元の検証データ。
そして、
183。
184。
186。
187。
その間に、
一つだけ抜けていた数字。
185。
最初にこの教材を見た時、
気になったのは、
書いてあった「100%」でした。
最後まで調べたあと、
気になったのは、
書かれていなかった「185」でした。



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