システムトレードは勝てない?

FXのシステムトレードや自動売買(EA)は、
本当に勝てないのでしょうか。

私も昔、
かなり興味を持っていました。

自分でデータを集めて、
パラメータを変えて、
バックテストの結果を眺める。

良い数字が出ると、
ちょっと嬉しい。

もっと良くできないかと、
また条件を変える。

この作業自体は、
今でも面白いと思っています。

ただ、
長くFXをやってきて感じるのは、

「過去に勝てたロジック」と「これからも勝てるロジック」は、
同じではない

ということです。

EAそのものを否定するつもりはありません。

実際、
EAやシステムトレードで利益を出している人はいます。

ただし、

「バックテストが良い」

「勝率が高い」

「過去数年間プラス」

という数字だけを見て、

これなら放っておいても勝ち続けられる

と考えるのは、
少し危険です。

エクセルでFXのシステムトレードを自作していた

私も以前、
システムトレードのようなことを自分で試していました。

たとえば、
COTレポート(Commitments of Traders)を使って、
先物市場のポジション動向を見たり、

エクセルにデータを入れて、
条件を変えながら結果を確認したりしていました。

どうすればバックテストの数字が良くなるのか。

パラメータを少し変える。

期間を変える。

条件を一つ加える。

すると、
結果が良くなることがあります。

これは結構楽しいです。

数字が改善していくと、
「何か見つけたのではないか」と思えてきます。

ただ、
ここに一つ落とし穴があります。

過去の値動きに合わせて条件を調整すれば、
過去の成績はある程度きれいにできる

ということです。

これが、
いわゆるカーブフィッティングや過剰最適化の問題です。

もちろん、
パラメータ調整そのものが悪いわけではありません。

問題は、

「過去に最適だった設定」が、

未来にも最適だと思い込んでしまうこと

です。

FXのシステムトレードはバックテストだけでは判断できない

EAやシステムトレードを見る時、
バックテストは重要です。

むしろ、
何も検証せずに使うよりは、
当然あった方がいいです。

ただし、
バックテストはあくまで

過去のデータに、そのルールを当てはめた結果

です。

未来の成績を保証するものではありません。

ここは、
かなり重要です。

たとえば、
バックテストでは良くても、
リアル運用では結果が変わることがあります。

理由はいくつもあります。

  • 実際のスプレッド
  • スリッページ
  • 約定速度
  • 注文が通る価格
  • ブローカーごとの配信レート差
  • 相場急変時の流動性

同じEAでも、
運用する環境によって結果が完全に一致しないことはあります。

特に、
短期売買を繰り返すEAほど、
数pipsの違いが積み重なって成績に影響しやすくなります。

そのため、

バックテストが良い=リアル運用でも同じ結果になる

とは限りません。

FXの自動売買(EA)で「勝率」だけを見るのは危険

EAを見る時、
どうしても目につくのが勝率です。

勝率80%。

勝率90%。

場合によっては、
ほとんど負けていないように見えるものもあります。

ただ、
勝率だけではリスクは分かりません。

勝率が高くても、

一回の負けが非常に大きい。

含み損を長く抱える。

ナンピンを繰り返す。

ロットを増やして耐える。

こうした運用なら、
数字の見た目と実際のリスクはかなり違います。

見るべきなのは、
勝率だけではありません。

  • 最大ドローダウン
  • 平均利益と平均損失
  • 含み損の大きさ
  • 最大保有ポジション数
  • ナンピンやマーチンの有無
  • 一回の損失が口座資金に対してどれくらいか
  • 成績が特定期間だけに偏っていないか

このあたりまで見ないと、
EAの性格は分かりません。

FXシステムトレードのロジックは相場環境が変わると機能しなくなることがある

システムトレードで一番難しいのは、

相場そのものが変化する

ことだと思います。

トレンドが出やすい時期。

レンジが続く時期。

ボラティリティが高い時期。

極端に低い時期。

金利差が強く意識される相場。

政治や金融政策で一気に動く相場。

同じドル円でも、
数年前と同じ値動きをするわけではありません。

ある環境に強かったロジックが、
別の環境では弱くなることがあります。

これは、
ロジックが突然壊れたというより、

ロジックが得意としていた環境が変わった

と考えた方が自然です。

だから、
過去10年で非常に良い成績だったとしても、

「今後10年も同じ」

とは言えません。

システムトレードの有名な教訓としてLTCMの破綻がある

システムや数理モデルの限界を考える時、
よく例に出されるのが
LTCM(Long-Term Capital Management)です。

LTCMは、
1994年にジョン・メリウェザーが設立したヘッジファンドです。

非常に高度な金融理論や数理モデルを使い、
市場の一時的な価格差が縮小していくことなどを利用して、
利益を狙っていました。

メンバーには、
後にノーベル経済学賞を受賞する
マイロン・ショールズやロバート・マートンも関わっていました。

ショールズとマートンは1997年、
デリバティブの価値を評価する方法に関する研究で
ノーベル経済学賞を受賞しています。

LTCMの運用成績は、
当初かなり良好でした。

1994年は約20%。

1995年は約43%。

1996年は約41%。

1997年も約17%のリターンを上げています。

ここだけを見ると、
まさに成功した運用モデルです。

しかし、
大きな問題がありました。

高いレバレッジ

です。

LTCMは、
小さな価格差から大きな利益を得るために、
多額の借入を使ってポジションを拡大していました。

1997年末には、
自己資本1ドルに対して、
約30ドルの負債を抱えるほどの高いレバレッジになっていました。

そして1998年。

ロシア危機などを背景に、
それまで想定していた価格差の収束とは逆方向へ
市場が大きく動きます。

LTCMは、
わずか一か月で大きな損失を出しました。

最終的には、
LTCMのポジションがあまりにも大きく、
無秩序に清算されれば金融市場全体に影響する可能性があるとして、

14の金融機関・証券会社が
約36億ドルを拠出する形で救済されました。

ここで注意したいのは、

「天才が数学を使っても投資では勝てない」

という単純な話ではないことです。

LTCMの教訓は、
もっと現実的です。

非常に高度なモデルでも、

  • 市場環境が急変する
  • 想定していた価格関係が崩れる
  • 流動性が低下する
  • レバレッジが高すぎる

といった条件が重なると、
大きな損失につながることがあります。

つまり、

モデルが優秀でも、リスク管理まで自動的に完璧になるわけではない

ということです。

FXのEA成績ブログや検証結果はどこまで信用できるのか

EAについて検索すると、
かなり良い成績が掲載されているブログや販売ページを見かけます。

もちろん、
すべてが嘘だとは思いません。

実際に、
良いEAもあります。

ただし、
数字を見る時は少し慎重になった方がいいです。

確認したいのは、

  • バックテストなのか、リアル口座なのか
  • どれくらいの期間運用しているのか
  • 含み損は成績にどう反映されているのか
  • 入出金で成績が分かりにくくなっていないか
  • 最大DDはどれくらいか
  • ナンピンやマーチンを使っていないか
  • 不調な時期も公開しているか

です。

特に注意したいのが、

「勝っている期間だけを見る」

ことです。

どんなロジックでも、
相場環境が合っている時期には
かなり良い数字になることがあります。

問題は、
合わない時期にどうなるかです。

成績を見るなら、
調子が良い時より、

調子が悪い時にどんな負け方をしているか

の方が重要だと思っています。

バックテストの成績が良すぎるEAほど確認したいこと

バックテストのグラフが、
ほぼ一直線に右肩上がり。

最大DDも小さい。

勝率も高い。

こういうEAを見ると、
かなり魅力的に見えます。

ただ、
数字が良すぎる時ほど、
私は少し疑って見ます。

理由は、

過去データへの最適化が強すぎる可能性

があるからです。

もちろん、
優秀なEAだから数字が良い可能性もあります。

ただし、

何度も条件を変え、
一番良かった設定だけを残せば、
過去の数字はかなり良く見せられます。

そのため、
バックテストを見るなら、

  • テスト期間が十分に長いか
  • 特定の相場だけで強くないか
  • フォワードテストでも同じ傾向があるか
  • パラメータを少し変えただけで成績が急激に悪化しないか

なども確認した方がいいです。

FXの自動売買(EA)は結局勝てないのか

ここまで読むと、

「ではEAは使わない方がいいのか」

と思うかもしれません。

私は、
そこまでは考えていません。

EAやシステムトレードでも、
利益を出すことはできます。

人間が感情でルールを破る部分を減らせる。

同じ条件を繰り返し実行できる。

複数の市場や時間帯を監視できる。

こうしたメリットもあります。

裁量よりも、
システム運用の方が合う人もいるでしょう。

ただし、

EAを使えば運用者が何も考えなくていい

という意味ではありません。

どのEAを使うのか。

どのくらいの資金を入れるのか。

どのロットで動かすのか。

最大DDをどこまで許容するのか。

いつ停止するのか。

複数EAをどう組み合わせるのか。

こうした判断は、
結局こちら側に残ります。

EAやシステムトレードで大事なのは「相場観」より運用判断

以前の私は、

「EAでも勝つには、
結局は裁量トレード能力が必要」

とかなり強く考えていました。

今は、
少し言い方を変えた方が正確だと思っています。

必要なのは、
必ずしも

「裁量でエントリーできる能力」

ではありません。

むしろ、

そのシステムが今どういう状態なのかを判断する能力

です。

たとえば、

  • 想定していたDDを超えていないか
  • 過去と違う負け方をしていないか
  • 相場環境が変わっていないか
  • ロットが大きすぎないか
  • 運用停止条件を決めているか

こうした部分です。

完全放置で、
永遠に同じ設定のまま勝ち続ける。

そこまで期待すると、
少し話が変わってきます。

FXのシステムトレードで一番怖いのは「理由が分からないまま勝つこと」

EAで勝っている時は、
何も問題がないように見えます。

口座残高も増える。

バックテスト通りに動く。

だから、
安心する。

でも、
一度成績が崩れ始めると、

「これは一時的な不調なのか」

「ロジックが機能しなくなったのか」

「まだ続けるべきなのか」

判断が難しくなります。

勝っていた理由を理解していなければ、
負け始めた理由も分かりません。

ここが、
システム運用の怖いところだと思っています。

だから私は、
EAを見る時、

「どれだけ勝っているか」だけではなく、
「なぜその成績になっているのか」

を見るようにしています。

勝率。

利益率。

最大DD。

ナンピン。

含み損。

相場環境。

ロット。

それぞれを見て、
初めてそのEAの性格が分かります。

FXのシステムトレードや自動売買(EA)を使うなら、数字より先に仕組みを見る

システムトレードやEAは、
悪いものではありません。

便利ですし、
人間にはできない処理を
機械に任せられるメリットもあります。

ただし、

「自動だから安全」

「バックテストが良いから安心」

「勝率が高いから低リスク」

とは限りません。

むしろ、
数字が良い時ほど、

その数字が
どうやって作られているのか

を見る。

そこが大切だと思っています。

システムを信用するかどうかを決める前に、

そのシステムが何をしているのか。

まずは、
そこを見る。

私は今でも、
それがシステムトレードの最初の一歩だと思っています。